2021年アトランタ連続銃撃事件(にせんにじゅういちねんアトランタれんぞくじゅうげきじけん)はアトランタのマッサージ店やスパが次々に銃撃され8人が死亡した事件。

事件の経緯

事件発生

1回目の銃撃(チェロキー郡)

犯人ロバート・アーロン・ロングは銃撃の数時間前に9mm拳銃をホリー・スプリングスの銃器店で購入した。なお、ジョージア州では他の多くの州と同様に銃器購入後の待機期間は設けられていなかった。その後ロングはアクワースのマッサージ店、ヤング・アジアン・マッサージに到着し、駐車場でおよそ1時間座っているところを防犯カメラに撮影されている。その後彼は東部標準時午後3時38分頃に入店し、1時間12分ほど滞在していた。なおこの間犯人が店内で何をしていたのかについては、警察も詳しく調べていない。同日彼と同じ日にマッサージ店を訪れた客は、客が訪れた午後4時40分ごろには犯人はまだまともに見えたと証言している。

犯人は午後4時50分にマッサージ店を出たが、その後しばらくして発砲があった。生存した被害者によると、犯人は店内に入って銃撃を始めたという。この被害者は床に身を投げて「撃たないでくれ」と懇願したが、犯人に顔をあげるよう言われて従ったところその顔を撃たれた。

郡保安官事務所への最初の通報は午後4時54分で、警察はロングが店を離れて数分以内に到着した。到着した警察官は廊下の先にある別の部屋で、2人が致命傷、3人が負傷しているのを見つけた。なお致命傷を受けた2名は搬送先の病院で死亡した。

また警察は妻や同僚が撃たれて混乱していた男性客が別の部屋のベッドに座っているのを見つけ、この客を4時間にわたり拘束した。

2、3回目の銃撃(ピードモント・ロード)

午後5時47分、アトランタ市警察(APD)は最初の銃撃現場から約30マイル(48km)離れたアトランタ北東部のピードモント・ロードにあるゴールド・マッサージ・スパで「強盗が発生した」という通報を受けた。警察官が駆けつけたところ、現場で3人の女性が銃で撃たれて死亡しているのを発見した。また警察官がゴールド・スパにいる間に、通りの向かいにあるアロマセラピー・スパで別の発砲事件の通報を受け、そこで別の女性が撃たれて死亡しているのを発見した。

ゴールド・マッサージ・スパで働いていて生存した従業員2名は事件当時の様子をこのように証言した。2名は空き部屋で銃声を聞き、その後ラウンジで布を被って隠れた。そのためか銃撃を受けたが負傷はしなかった。証言によると犯人は銃撃中言葉を発することはなく、また2つあるスパのドアを両方施錠してから銃撃を行なった。韓国の有力紙である朝鮮日報は記事において、犯人が「アジア人を皆殺しにする」と言っていたという従業員の証言を取り上げた。また他の目撃者は、犯人がアロマセラピー・スパのドアを開けた従業員を撃ち、中に入らずに立ち去ったと証言している。

その後アトランタ警察はピードモント・ロードとチェロキー郡の事件の関連性に気づき、連邦捜査局(FBI)に捜査支援を要請した。

犯人逮捕

最初の銃撃後、チェロキー郡警察は監視カメラの映像を公開し、ロングの両親から連絡を受けたことで犯人を認識した。その後両親は事情聴取を受けていたが、その間に第2、第3の銃撃がアトランタで発生し、アトランタ警察が対応した。両親は息子が乗るヒュンダイ・ツーソンに追跡装置が取り付けられていることを証言した。この追跡装置の情報と監視カメラの映像により、警察は彼の居場所を突き止めることができた。

事件発生から約3時間半が経過した午後8時30分、アトランタから南へ150マイル(240km)離れたクリスプ郡でロングが発見された。彼は自動車に乗ってフロリダ州へ向かう途中であり、追跡したジョージア州交通警察隊が州間高速75号線上で彼を逮捕した。

彼は最初チェロキー郡の銃撃容疑で逮捕され、のちにピードモント・ロードの銃撃についても容疑がかけられた.。また彼の車内からは事件に使用したものと見られる拳銃が発見された。

被害者

銃撃により8名が死亡、1名が負傷した。死亡した8名のうち6名は事故現場、1名は搬送中、1名は治療中に死亡している。また人種・性別で見ると6名がアジア系女性、1名が白人女性、1名が白人男性だった。また負傷した1名はグアテマラ出身のヒスパニック男性である。韓国外交部は事件後、犠牲者のうち4名が韓国系アメリカ人で、1名が韓国籍を有していたと発表した。

容疑者

容疑者ロバート・アーロン・ロングはジョージア州ウッドストック在住の21歳男性。2017年秋にノース・ジョージア大学に入学したが、1年で中退した。事件当時は猟師をしており、南部バプテスト連盟所属の教会に通っていた。また郡保安官は彼に前科がなかったことを発表している。

彼は最初の事件があったスパ近くにある福音派治療施設ホープクエストへ通っており、性依存症の治療を受けていた。治療施設のルームメイトによると、彼はその「篤い信仰心」の故に自身の性依存症に苦しんでいたが、性依存症を再発して性風俗店へ通っていた。

彼の両親は彼が毎日数時間にわたりインターネットポルノを見ていたと証言し、性依存症を理由に事件前日には家から追い出している。警察の報告書には、彼が家を追い出されたことによって「感情的になっていた」と記載されていた。

動機

警察の捜査によると、ロングは自身の信仰心と相反する性依存が事件の動機だと証言した。彼は事件現場となったマッサージ店の客であり、それらの店が自身の性的欲求の原因だと考えていた。これらのマッサージ店では実際過去に10件の売春容疑による逮捕が行われており、また3つの事件現場全てがオンライン上の性風俗店ガイドに掲載されていた。

彼は警察の取り調べに対して「最初は自殺を考えていたが、後になって性産業を標的にして他の性依存症被害者を『助けよう』と決めた」と証言している。また郡保安官によると、彼はマッサージ店を標的にすることで自身の性的欲求を「消し去ろう」としていた。

反響

死亡した8人のうち6人がアジア人女性であることからアジア人に対するヘイトクライムではという声があがり、以前から使用されていたタグの#StopAsianHateがアメリカでのTwitterのトレンド1位になった。アメリカ各地で2021年対アジア人暴力反対集会が開かれた。

米韓政府の反応

事件2日後の3月18日、アメリカ合衆国大統領ジョー・バイデンは事件被害者追悼のためホワイトハウスや政府機関、軍当局、軍艦などに対して3月22日の日没まで半旗を掲げることを命じた。翌日19日にはバイデン大統領とその副大統領カマラ・ハリスが地元アトランタのアジア系住民代表者と会談をおこなった。さらに会談後の記者会見では大統領が新型コロナウイルス感染症の流行に伴う人種差別を非難する声明を発表し、COVID-19ヘイト・クライム法の制定を推進すると述べた。

韓国では事件3日後の3月19日に外交部長官鄭義溶、国防部長官徐旭がソウルにて米国国務長官アントニー・ブリンケン、国防長官ロイド・オースティンと会談した。また同日には韓国外交部が声明を発表した。

4月14日にはアメリカ合衆国の上院が賛成92、反対6の賛成多数で反新型コロナウイルス感染症ヘイトクライム法を承認した。これは司法省が新型コロナウイルス感染症に関連するヘイトクライムについてデータベースが作成することを可能にするものである。その後5月18日には下院でも賛成364、反対62に賛成多数で可決され、5月20日には大統領の署名が行われた。

引用


トロントで銃撃事件、1人死亡 13人負傷 WSJ

アトランタのアジア系スパで連続銃撃事件の犯人、4人の殺害容疑 Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)

【銃乱射事件】チェコ・プラハの大学で発生!当局者「同国史上最悪の銃乱射事件」(12/21)事件の状況を動画と画像で!|ゆるログ

アトランタのアジア系女性ら銃撃、犯人の動機は人種でなく性依存症だった?|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

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