臭化銅(I)(しゅうかどう(I)、Copper(I) bromide)は、化学式がCuBrの無機化合物である。反磁性の固体で、硫化亜鉛と同様のポリマー構造をとる。この化合物は有機合成に広く用いられる。

性質

銅(II)不純物のためにしばしば着色(写真参照)されるが純粋なものは無色である。臭化銅(I)は臭化物イオンによって四面体のCu中心が相互連結された特徴的な四配位のポリマー構造のためほとんどの溶媒には溶けない。ルイス塩基で処理すると付加化合物に変化する。例えば、ジメチルスルフィドでは無色の錯体が形成する。

CuBr   S ( CH 3 ) 2 CuBr ( S ( CH 3 ) 2 ) {\displaystyle {\ce {CuBr\ S(CH3)2 -> CuBr(S(CH3)2)}}}

この錯体は線形ジオメトリで、銅は二配位である。また、他のソフトな配位子により関連した錯体を作ることもできる。例えば、トリフェニルホスフィンはCuBr(P(C6H5)3)を与える。しかし、この化学種はより複雑な構造をとる。

合成

一般的には、臭化物の存在下で銅(II)塩を亜硫酸塩で還元することで合成される。

2 CuBr 2   H 2 O   SO 3 2 2 CuBr   SO 4 2   2 HBr {\displaystyle {\ce {2CuBr2\ H2O\ SO3^{2-}-> 2CuBr\ SO4^{2-}\ 2HBr}}}

また、塩化銅(I)の合成と同じような方法で、臭化水素酸に銅粉末を溶解させても生成する。

2 HBr   2 Cu 2 CuBr   H 2 {\displaystyle {\ce {2HBr\ 2Cu -> 2CuBr\ H2}}}

有機化学への応用

ザンドマイヤー反応では、CuBrはアニリン化合物を対応する臭化アリールに変換する。

ArN 2   CuBr ArBr   N 2   Cu {\displaystyle {\ce {ArN2^ \ CuBr -> ArBr\ N2\ Cu^ }}}

先述の錯体CuBr(S(CH3)2)は有機銅試薬の合成に広く用いられる。関連するCuBr錯体は原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization)と銅触媒クロス脱水素カップリング(CDC)の触媒に使われる。

脚注


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精密有機合成に銅-ジルコニア固溶体触媒が有効 つくばサイエンスニュース

塩化銅(II)India Fine Chemicals

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